人工知能(AI)はどこにでもあります。これは 映画や本でよく描かれているような、恐ろしくて黙示録的な「ロボットの登場」という意味ではありません。そうではなく、私たちが日常生活を送る中で、毎週何十もの便利でシームレスなインタラクションをAIと行っていることを指しているのです。

Amazon、Netflix、Googleでのおすすめ情報ですか?それもAIが提案しています。TwitterやFacebookでパーソナライズされたフィードですか?これもAIです。SiriやAlexaに話しかけたときですか?そうです、ご想像の通りです。これらの全ては 会話型AIによって動いているのです。顔認識や盗作発見ソフトウェア、スパムフィルターや家庭用スマートガジェットまで、あらゆるものが人工知能に支えられています。

それはマーケティングにおいても同じです。AIはどこにでもあるのです。

今回は人工知能と機械学習がブランドのマーケティング戦略の原動力となっている素晴らしい事例を探ってみましょう。そしてあなたがまだ気づいていないかもしれない、マーケティングを目的とした、AIの最先端で画期的な使い方のいくつかを紹介します。また過去のAIでは不可能であったものの、最新のAIでマーケターができる様になったことも話していきます。

まず冒頭では マーケターにとってのAIの現状はどうなっているのか?どこに向かっているのか?を紹介していきましょう。

High-performance marketing teams embrace AI stats | UneeQ digital humans

AIを利用しているマーケターはどれくらいいるのか?

多くのマーケターがAIを間接的に利用していることでしょう。FacebookやHubSpotなどの日常的なツールに組み込まれたアルゴリズムを考慮すると、実際にはほぼ全ての人がそうです。しかし、包括的で完全に定義されたAI戦略を持っている人はどれくらいいるのでしょうか? Salesforceによると 、2021年には約60%となり、前年の57%から上昇していました。

特に好業績の組織に注目すると、この数字はさらに上昇して64%になります。一方で業績不振のブランドでは、明確な戦略を持っているのはわずか45%でした。このことは、人工知能への積極的な取り組みが、組織の業績向上に役立っていることを示唆しています。

なお、これは業績不振の特効薬ではありません。好業績のチームのすべてがAIを使用しているわけではなく、AIを使用したからといって好業績のチームになるわけではありません。しかし、相関関係はあります。マーケティングにAIを使用している人は、より高いレベルのパフォーマンスを発揮する可能性が高いのです。それは恐らく、AIがいかにうまく展開され、クリエイティブに使用され、チームやビジネスに浸透させるかに起因していると思われます

マーケティングチームはどのようにAIを活用しているのか?

現在、ブランドはAIをどのように活用しているのでしょうか?実際には数え切れないほどの方法があリます。それではSalesforceが公表している上位5つの創造的なアプローチについて紹介していきましょう。

  1. 次善の策を講じる。
  2. カスタマージャーニー全体をパーソナライズする。
  3. 顧客とのインタラクションを自動化する
  4. 個々のチャネルの体験をパーソナライズする。
  5. プロセスのオートメーション

マーケティング・パーソナライゼーションとオートメーションこれほどまでに高い 評価を得たことに驚きはありません。これらはAIがもたらす大きなメリットであり、マーケティング担当者がこれまでできなかったことを実現するのに役立ちます。そして、最も重要なことは、どちらもより良いユーザーエクスペリエンスに繋がるということです。

しかし「論より証拠」とよく言われるように、マーケティングAIについて話すことと、それを実際に見てみることは別のことです。そこで、AIがより良いパーソナライゼーション、オートメーション、その他のマーケティング活動を推進する魅力的な実例を見てみましょう。

Top FIVE uses of AI in marketing | UneeQ digital humans

マーケティングにおけるAIの驚くべき5つの活用事例

1. 強力なパーソナライゼーション

人々はパーソナライズされた体験を期待しており、その期待は年々高まっています。 昨年、Twilioの パーソナライゼーションの現状」というレポートでは 、45%の消費者が パーソナライズされていない、つまり一般的な体験を提供するブランドはロイヤリティを失うと回答しました。2022年には、この数値は62%に跳ね上がっています。

企業は顧客の離反を防ぐだけでなく、それ以上の利益を得ることができます。アンケートでは受けた消費者のうち80%は、パーソナライズされた体験が購買意欲を高め、平均で34%以上も消費を増加させることに同意しています。逆にパーソナライズされた体験を提供できないブランドは、収益が上がりにくくなるのは明らかでしょう。

統計データはこれくらいにして、実例紹介に進みましょう。Starbucksはこの分野での先駆者です。Starbucksは、店舗、ポイントカード、アプリを通じて、週に1億件以上のトランザクションを収集しています。そして、この情報はStarbucksのデータサイエンティストの専門チームによって有効活用されています。

例えば、1700万人のユーザーを持つアプリは、顧客がいつ、どこで、何を飲むかについてのデータを継続的に収集しています。これは、同社のDigital Flywheel ProgramというクラウドベースのAIエンジンを通じて行われ、過去の購入履歴をもとに正確なレコメンデーションを提供することができるのです。

いつもと違うStarbucksを訪問した場合ですか?それは問題ではありません。店舗のPOS システムが携帯電話を通してあなたが会員であることを認識し、普段あなたが注文するものをバリスタに知らせます。Starbucksでは、AIが気候データとお客様の好みを組み合わせて、天候を考慮した提案を行うことも可能です。

外が凍えるほど寒い場合ですか?その時はホットチョコレートを提供するかもしれません。暑い時は?アイスティーです。これは、液体の形をしたパーソナライゼーションなのです。

Consumers want more marketing personalization

2. チャットボットによる高速オートメーション

メイクアップとスキンケアの小売業者であるSephoraは、AIを搭載したチャットボットを最大限に活用する方法を知っています。2017年以降、同ブランドはFacebookやKikなどのソーシャルメディア大手と提携し、オンラインでの顧客とのやり取りを自動化しています。

SephoraのチャットボットOraはバーチャル美容コーチであり、24時間365日体制で、よくある質問に答えたり、顧客の注文を手伝ったり、チュートリアル動画や美容の秘訣など、パーソナライズしたコンテンツを提供したりしています。その成果ですか? このチャットボットを開発したViseoによるとわずか数週間のうちに、このチャットボットだけ で、顧客の全要望の20%をうまく処理できるようになったとのことです。

AIはどこに入っているのか?このチャットボットはAIのビルディングブロックを使用し、Sephoraのバックエンド情報システムに接続することで、よりパーソナライズされた、自然で状況に応じたインタラクションや会話を生み出すのに役立っているのです。

2022年まで早送りすると、会話型AIとチャットボットを使用しているブランドはSephoraだけではありません。そして、そうしたブランドにとって、その結果は心強いものとなっています。最近のDriftの調査では、 インテリジェントなチャットボットを使用している企業の82%が、市場戦略において非常に価値のある資産であると感じていることがわかりました。

また、消費者がチャットボットと本物の人間のどちらとの対話を好むかについては、時に結果が分かれることがありますが、人々はチャットボットに好意的であるようです。Driftの調査によると、2020年から2021年にかけて、消費者の間でAIチャットボットの利用が前年比45%急増したとのことです。

もちろん、チャットボットが全てにうまく対応できるわけではありません。ブランドは、チャットボットの適切な使い方と、 他の選択肢の方が良い場合を知ることが重要です

3. デジタルヒューマンでAIの個性を表現する

他の選択肢といえば、デジタルヒューマンです。チャットボットは、顧客に製品に関する情報を提供したり、ウェブサイトを案内したり、フィードバックを求めたりといった特定のタスクに最適です。しかし、たとえAIを搭載していても限界があります。

例えば、温かみや共感を表現するチャットボットを作ることはまず不可能です。ほとんどのブランドは、初歩的な「個性」以上のものをチャットボットに持たせて おらず、4分の1近くのが、 親しみやすさや信頼性に欠けるため、チャットボットと対話することを好まないのです。

そこで、デジタルヒューマンの出番です。個性の多くは、表情、声のトーン、アイコンタクト、ユーモアのセンスによって伝わります。デジタルヒューマンは、AIによってこれらすべてを取り込み、お客様との信頼関係を築くための優れたブランドアンバサダーとなるのです。

昨年、私たちはHebrew University of Jerusalemと協力し 、デジタルヒューマンのプラットフォーム上にAlbert Einsteinのバーチャル構築しました。 Digital Einsteinは、見た目や声だけでなく、彼のユニークな癖や特徴も数多く再現しています。

どのブラウザからでも、この偉大な物理学者のデジタルクローンと対話することができます。このEinsteinバージョンは、彼の人生に関する質問に答えることができ、毎日クイズも出題したりします。

マーケティングの観点からも、この結果は素晴らしいものでした。Digital Einsteinの導入後、ウェブトラフィックは350%増加し、マーケティング上適格とされるリードは140%増加しました。AIに個性を持たせるとどうなるかについて、私たちの調査結果を以下のガイドにまとめましたので、ご興味のある方はご覧ください。

4. コンテンツでクリエイティブになる

この記事全体がAIによって書かれたものだと知ったら驚かれるでしょうか?実は、そうではありません。でも、もうすぐそうなるかもしれません。(このライターにとっては、実に残念なことですが…)。

実際に人工知能のおかげで、企業はかつてないほど速く原稿を作成できるようになり、その品質も飛躍的に向上しているのです。どのように機能するのかですか?機械学習に基づくアルゴリズムが何百万ものウェブサイトを調査し、よく使われる単語や構文、文法など、言葉のパターンを理解しているのです。

次に、いくつかのパラメータを設定し、トピックを指定すると、コンテンツがゼロから生成されます。 さらに、AIが コピーライティングに人間らしを与えてくれると主張する企業もあります。人間以上の人間らしさ、らしいです。

JP MorganChaseは、テクノロジー主導のマーケティング会社Persadoと提携し、AIを使って見出しと原稿を書き直しました。 通常の代理店が制作したコンテンツが200%増にとどまったのに対し、試験期間中のコンピューターが書いた原稿はクリック率が450%も跳ね上がりました

「マーケティング担当者が主観的な判断と経験で書き直さないような原稿や見出しを、AIが書き直したのです」と、JPMorgan ChaseのCMOであるKristin Lemkau氏は述べています。

また、AIがコンテンツの創造性を揺るがしているのは、コピーライティングだけではありません。最近、Heinzは、テキスト入力からリアルな画像を作成するAIシステム「DALL-E 2」に「ケチャップ」を描いてもらうという、魅力的な新キャンペーンを開始しました。

このプログラムは、プールに浮かぶケチャップボトルなど、多くの不可解で風変わりなイメージを描きました。しかし、多くの画像に共通していたのは、歴史あるガラス瓶や特徴的なロゴに至るまで、Heinz社のトマトケチャップに酷似していたことです。

当然ながら、Heinz社はこの結果を自社のブランディングにとっては、大きな成功だったと主張しています。

「最も公平な情報ソースでさえ『ケチャップと言えばHeinzだ』と認めてくれたことに感激しています」と、同社のブランドコミュニケーション担当シニアブランドマネージャー、Jacqueline Chao氏は述べています。

 

出典|The Drum, 2022

5. AI音声技術で人々を魅了する

コンテンツ系のテーマを続けますが、多くのマーケターは動画コンテンツが(特にソーシャルメディアにおいて)王道であると主張するでしょう。

2022年の Wyzowlの調査では、 消費者の88%がブランドの動画を見て製品やサービスを買うと決めた経験があると認めています。 新しい製品やサービスについてどのように知りたいかという質問には、73%が「短い説明ビデオ」を選びました。次に多かったのは、テキストベースの記事で11%という結果でした(#悲しい顔)。

しかし、質の高いビデオコンテンツを作成するのは簡単ではありません。ナレーションを録音するのでさえ、長くて大変な作業です。通常、次のような流れになるでしょう。

  1. アイデア出し
  2. スクリプト作成
  3. タレント探し
  4. タレントのオーディション
  5. タレントの選定
  6. ナレーションの録音
  7. 問題がないことを祈りながら、何度かリテイクを行う。

このすでに長いリストに、あなた独自のステップを追加することもできます。しかし、AI音声技術によって、このプロセスの多くの苦痛が取り除かれることが判明しました。実際、最後の5つのステップは、最新のボイスオーバー技術を使えば、数時間から数分で完了することができます。

その結果、これまで以上に人間らしい音声が得られるようになりつつあります。ディープラーニングの飛躍的な進歩により、AIナレーションは単に言葉を発するだけでなく、適切な場所に間や息づかいを加えるようになりました。感情や共感も伝えることができます。

さらにVeritoneのような企業は、有名人の声を(倫理的に)クローンして 、より素晴らしいものに仕上げることができます。 つまり、ブランドアンバサダーは、スタジオで長い時間をかけてセリフを覚え、暗唱し、やり直す必要がないのです。

私たちは、AIボイステックの利点を特に重視しています。デジタルヒューマンには何でも言えることが必要ですが、有名人やアンバサダー、VOアーティストに対して、ありとあらゆる言葉の録音を求めるのは(控えめに言っても)非現実的な話です。その代わりに2022年では、マイク一本と巧みなAIのトリックがあれば、2、3時間で十分なのです。

Digital Einsteinと同様に 歴史上の著名な故人やIP所有者と協力して、その声をデジタルで再現することも可能です。例えば、ElvisがBrylcreemの広告をする時の声を聞いてみたいと思わない人はいないでしょう。あるいは、故Sean Connery氏がJames Bondの好物であるマティーニを宣伝しているのを聞いてみたくはないでしょうか?

マーケティングにおけるAI:ROIへの道

McKinseyの最新 レポート「State of AIでは、「マーケティングとセールス」は、AIの導入が最も進んでいるビジネス分野のトップ3に入っています(「サービスオペレーション」「製品またはサービス開発」と共に)

もしAIを使っていない場合は、遅れをとる危険性があるのです。 それだけではなく、企業のマーケティング予算として最も増えているのは、AI関連の費用になります。つまり、AIに大きな予算をかける必要はありませんが、企業はROIを意識してお金を使うべき良いタイミングと見ているのです。

マーケティングにおけるAIは、もはや新しい最先端のイノベーションではありません。また、導入にコンピュータサイエンスの博士号が必要なわけでもありません。このプロセスは、ユーザーフレンドリーなソフトウェアとプラットフォームによって民主化されており、その効果は容易に測定可能です。

Starbucksは、パーソナライズされたメッセージに基づく顧客の平均消費額の増加を知っているはずです。Heinzは、AIが生成したコンテンツのクリックスルー率にきっと唾を飲んでいることでしょう。 私たちのデジタルヒューマンにおいても、オンラインコンバージョンレートがほぼ100%上昇し、カート放棄率などの他の指標は大幅に低下しています。

AIを巧みに利用することで、ブランドの構築やイノベーションのリーダーとしての地位を示すことができるかもしれないなど、定量化が困難な成功例もあります。

成功やROIをどのように判断するにしても、AIのようなマーケティングツールはまだ始まったばかりです。ブランドは、マーケティングをよりパーソナライズし、ターゲットを絞り、より人間らしい ものにする方法を探し続けているのです