Jane Snowballをご存知でしょうか?ご存知でなくても無理はありません。しかし、Amazon、eBay、アリババ、そしてメタバースで買い物をするという概念ができる前に、彼女はeコマースのパイオニアだったのです。Janeはテクノロジーに長けた子供でも小売の達人でも何でもなく、1983年に史上初めて商品を「オンライン」で注文した72歳のおばあちゃんでした。

Janeはテレビとリモコンに接続されたVideotexという技術を使って、テレビから食料品の買い物ができるようになりました。その注文は電話回線を通じて地元のスーパーマーケット「テスコ」に送られ、テスコはイギリスのゲーツヘッドにあるJaneの自宅まで直接商品を届けてくれたのです。

JaneはWorld Wide Webが一般に紹介される10年近く前に、まさか自分がeコマースの歴史を作っていたとは全く知りませんでした。いわば、Web-1.0の時代です。

このユニークで画期的なデジタル体験について彼女はどう思ったのでしょうか。彼女は「素晴らしい」とだけ言いました。口数が少なく、力強い女性、それがJaneです。しかしVideotexの技術を支えてきたMichael Aldrich氏は、彼女が1つだけ不満を持っていたことを鮮明に覚えていました。それは直接会って買い物をすることの機会を失ってしまったことです。

「買い物は彼女が友人と会える社会的な活動だったのです」と、彼はBBCに語っています。

メタバースにおけるeコマースを社会的な体験にするために

Janeは素晴らしい指摘をしています。多くの人にとって、買い物は機能的なものであると同時に社会的な体験でもあります。インターネット初期の評論家たちは、実店舗での買い物で得られる交流や対面での会話が失われてしまうため、eコマースは流行らないだろうと、すぐに主張しました。

しかし彼らのオンラインショッピングの人気についての見解は明らかに間違っていました。利便性、コスト、効率性などのメリットは無視できないほど優れていたのです。

そしてもちろん、評論家たちはeコマースの爆発的な普及に拍車をかけるパンデミックを予見していませんでした。このパンデミックは、オンラインショッピングに欠けているもう一つのもの、すなわち「人とのつながりの必要性」にさりげなく光を当てているのです。

今後買い物をする際、消費者の5人に4人以上(82%)は人間同士の交流が少なくなるのではなく、多くなることを望んでいるのです。eコマースの売上は年々増加し続けていますが、Janeのように買い物が単なる無感動な取引ではなく、体験できるものであってほしいと願う人はまだ大勢います。そして、彼らはそれを望んでいるだけでなく、その体験により多くのお金を払うというのです。

同様に81%の人が、ブランドのデジタルプレゼンスは店舗でのプレゼンスと同じくらい重要であると回答しており、長らく矛盾した状況が続いていました。ではデジタルの世界でより多くの人間的なつながりを得るにはどうすれば良いのでしょうか?

そこでメタバースにおける小売が登場するわけですが、これは完璧なタイミングと言えるかもしれません。eコマースの利便性とスピード、店舗での人間的なつながりがある体験がシームレスに融合され、両者のメリットを引き出すチャンスがあるのです。

Snowball夫人も認めてくださることでしょう。さて、小売業者はこのようなユニークな体験をどのように提供するのでしょうか。

Metaverse ecommerce and online shopping retail stats | Importance of digital and in-store presence | UneeQ Blog

小売業者がメタバースでできるようになることとは?

メタバースはまだ黎明期かもしれませんが、先進的なブランドや開発者は現在、バーチャル世界を模索しています。これらは(最終的には)シームレスに相互接続された世界となる可能性があります。そして、このようなバーチャル世界において、私たちはすでに各ブランドがメタバースにおけるeコマースがどのようなものを提供出来るかを決めつつあることを目の当たりにしています。

  • 完全な没入型体験
  • Direct-to-Avatar (D2A) 販売
  • 価値提案の刷新の可能性
  • VIPショッピングの活性化

1. 完全な没入型体験

デジタルストアは、メタバースショッピングの主役になる可能性が高いでしょう。そしてブランドは、人々をリピーターにするために、現実世界でのショッピングで得られる感覚的な体験(光、音、感触)を可能な限り再現したいと考えるはずです。

現在、すでにバーチャルショールームを持っている企業もありますが、完全なデジタルストアは、人々が見て、試して、購入できる3Dアセットをメタバース内で全て提供し、物事を次のレベルに進めることができます。消費者は、店員(人間もしくはデジタルヒューマン)とリアルタイムで対話し、質問をしたり、商品を購入したり、おすすめの商品を教えてもらったりすることもできるのです。

しかしメタバースを利用する最大の理由は、「物理的な現実ではできないことを体験するため」であることを忘れないでください。先日のウェビナーでお伝えしたように、メタバースとVストアは、お客様がこれまで行ってきたこと、経験してきたこととは異なることを行う機会として捉えてください。

2. Direct-to-Avatar(D2A)販売

メタバースで商品を購入し、それを物理的に(現実の)自宅に配送することも可能になるでしょうが、完全にバーチャルで行われる取引も多くなるでしょう。

D2Aは、ブランドが顧客のデジタルIDに直接バーチャル製品を販売するビジネスモデルであり、これらのアイテムはメタバース内にのみ存在することになります。ファッションデザイナーや自動車ブランド、その他の高級小売業者などはすでにデジタル専用のコレクションを実験的に作り始めています。これは、より多くの人々が現実の趣味や嗜好を反映したオンラインのペルソナを開発しようとするためです。

RobloxでバーチャルなGucciのバッグが現実のものより高く売れたことを覚えているでしょうか?その値段は異常かもしれませんが、このメディアは異常ではありません。 Z世代の買い物客の4分の3がビデオゲーム内でデジタルアイテムを購入したことがあり、60%がメタバースプラットフォームでもブランドは製品を販売すべきだと答えています。

3. 価値観の刷新の可能性

消費者は素晴らしい体験に対してより多くのお金を払うと言いましたが、これは様々な商品タイプにおいて共通していることです。

例えば、PwCによると、米国の消費者はコーヒーを買う際に、その店が素晴らしい体験を提供していれば平均して16%も多く支払うと言われています。スポーツのチケットや携帯電話の新プランの価格でも大きな価値向上が期待できます(それぞれ13%と8%)。これは、提供する側が購入者の体験を印象に残るものにすることができればの話です。

価格競争を強いられているブラドにとって無限の可能性を持つメタバースは、ついに価格ではなく「体験」で競争することを可能にし、より価格調整の余地を与えてくれるかもしれません。

4. VIPショッピングの活性化

トップクラスの顧客には、ブランドアンバサダーとの会合やオンライン限定イベントへの参加、唯一無二のNFTの受け取り、そして新製品やサービスの先行見学など、メタバース上での様々なVIP体験を提供することができるでしょう。

逆に、Qatar Airways(カタール航空)のQverseは、VIP、ビジネス、ファーストクラスの空の旅がどのようなものかを、誰でも体験することができます。ほとんどの人にとっては憧れでしかない体験を窓から覗くことができるのです。

また、バーチャル世界でのeコマースのゲーム化が進むと思われます。つまり、リピート購入以外にも、VIP待遇を得るための新たな方法が生まれるということです。例えばロイヤルカスタマーはブランドのバーチャルストアで一定時間過ごすことで報酬を得たり、自分のアバターにブランド製品を表示させたりすることもできるでしょう。

これらのコンセプトは氷山の一角であり、バーチャル世界でのeコマースを模索する小売業者から、本当の意味で革新的なアイデアが生まれることが期待されてます。しかし、単に適切な環境を構築するだけでなく、メタバースに適切な人々を配置する ことが重要です。

Digital humans in metaverse ecommerce and online shopping retail | UneeQ Blog

デジタルヒューマンがメタバースのeコマースにもたらすもの

ゲームは、現在存在するものの中で最もメタバースに近いものです。しかし、バーテンダーや鍛冶屋、店主になって1日8時間もの時間を過ごすために誰がWorld of Warcraftをプレイし続けられるでしょうか?メタバースにはスケーラブル(拡張可能)で常時稼働で仕事をこなせるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が必要です。彼らはAIによって動かされる必要があり、個性も必要です。

メタバースは多忙な場所になりそうです。終わりのないデジタル世界ならともかく、実生活で消費者をリピーターにするような本当に心に残る人間的な交流の場を提供することは、ブランドにとってすでに難しいことなのです。

そして、それらを完全に再現したメタバースは現時点で完璧ではありませんが、デジタルヒューマンは準備ができています。

UneeQのデジタルヒューマンは、顧客エンゲージメント(300%増)、オンラインコンバージョン率(92%増)、カートの放棄率の低減など、あらゆる面でポジティブな影響を与えています。

AIを搭載したスケーラブルな労働力は、メタバースにおける小売業者にとってシンプルに必要な存在となるでしょう。彼らは24時間利用できるだけでなく、ブランドの外観、音声、価値観、メッセージを体現するようにデザインすることができます。これまでオンライン環境では不可能だったことを可能にし、没入感を高めるという期待に応えます。

親しみやすく対話的で一貫性のあるメタバースにおけるデジタルヒューマンは、今日も準備万端です…そして、ブランドもそれに追いつこうとしています。

メタバースにおけるeコマースへの準備

次に来る大きなものを予測するのは容易ではありません。

1940年代にテレビが一般家庭に普及し始めた頃、20世紀フォックス(Twentieth Century Fox)の最高経営責任者であったDarryl Zanuck氏は、テレビが普及するとは思ってもみませんでした。

「人々は毎晩ベニヤ板の箱を見つめていることに、すぐに飽きてしまうだろう」と彼は言いました。

もっと最近では、2007年に当時のMicrosoftのCEOであったSteve Ballmer氏が、最近発売されたiPhoneが「大きな市場シェア」を獲得する可能性は「ゼロ」だとUSA Today紙に語っていました。

また、Will Smith氏が「マトリックス」のNeo役で素晴らしい演技を披露し、私たちを驚かせたのを覚えていますか?覚えていませんか?なぜなら彼は監督の映画の売り込み方法に感銘を受けなかったため、その役を断ったからです。代わりに「Wild Wild West」に出演することを選んだのです…。

メタバースがeコマースの次の大きな流れになると考えられる理由はたくさんあります。

結局のところ小売業は、ゲーム以外でWeb 3.0の実験が最も速く行われている業界の1つなのです。消費者自身が、没入型デジタル体験を通じて行う事の中で最も興味があることは「買い物」であると述べています。事実として、数え切れないほどのブランドがすでにメタバースに向けた準備を進めているのです

小売業、銀行業、ヘルスケアやエンターテイメントなどあらゆる分野において、メタバースはこれまでと何か違うことをするチャンスなのです。

あるいは、RobloxのChristina Wooton氏はこう表現しています。「ブランドはメタバースにおける創造性の限界を押し広げ、現実では再現不可能な体験を提供することができる」これは私たちが望んでいる現実のように聞こえますが、あなたにとってはいかがでしょうか?